アメリカ陸軍がASRの弾薬に シグ・ザウエル を選択

アメリカ陸軍がASRの弾薬に シグ・ザウエル を選択
アメリカ陸軍がASRの弾薬に シグ・ザウエル を選択
 

アメリカ陸軍の新スナイパーライフルMk22 ASRで使う弾薬が決まった。選ばれたのは、シグ・ザウエル製のノルマ・マグナム弾だ。この記事では、弾薬と銃、選定の背景を整理する。

ノルマ・マグナム弾の採用まとめ

  • 選定の対象は、Mk22 ASR用の.300と.338のノルマ・マグナム弾だ
  • 納入品の呼称は、M1163とM1162だ
  • ベースの銃は、バレットのボルトアクション「MRAD」だ
  • SIGは、MG338用に.338ノルマ・マグナム弾の対応も進めている

アメリカ陸軍が、新規採用のボルトアクションMK22 ASR用の弾薬として
シグ・ザウエル 製ノルマ・マグナム弾を選択

アメリカ陸軍・海軍が使用するPSR(Precision Sniper Rifle)の弾薬を供給している シグ・ザウエル (SIG SAUER)は、今後アメリカ軍内で主要スナイパーライフルとなるMk22 ASR(Advanced Sniper Rifle)用の弾薬として、同社製の.300 Norma Magnum弾及び.338 Norma Magnum弾をアメリカ陸軍が選択したと発表した。

USSOCOM(アメリカ特殊作戦軍)が選定を進め、陸軍と海兵隊が置き換えを予定しているMk22 ASRだが、海兵隊では全てのボルトアクションをMk22 ASRへ交換することを希望しているほか、アメリカ陸軍ではその海兵隊を大きく上回る予算を割く予定だ。

今回の発表は、2022年6月にSIG SAUERが公表した。アメリカ陸軍はMk22 ASRの弾薬として、2種のノルマ・マグナム弾を選んだ。また、SIGの生産拠点はアーカンソー州ジャクソンビルだ。

MK22 ASR

 

Mk22 ASRとは?

Mk22 ASRはM82A1 アンチマテリアルライフルで有名なバレット・ファイアーアームズ(Barrett Firearms)が設計・製造しているボルトアクションライフルMRAD(Multi-Role Adaptive Design)のアメリカ軍での採用名。

MRADは、バレットが開発した多用途のボルトアクションだ。名称のとおり、状況に合わせて構成を変えられる。そのため、軍の要求に合わせやすい銃といえる。

Mk21 PSRからMk22 ASRへの流れ

元々USSOCOM(アメリカ特殊作戦軍)が2009年に発表したPSR要件に対しバレットが開発したボルトアクションライフルだが、その際はレミントンMSR(Remington Modular Sniper Rifle)がMk21 PSRとして採用された。その後2018年になるとMk21 PSRはその時点のUSSOCOMの要件を満たしていないと判断され、すぐさまMk22 ASRとして再度選定が行われることになり、2019年に特殊作戦軍のスナイパーライフルとして採用された。

年 出来事
2009年 USSOCOMがPSR要件を発表
2018年 Mk21 PSRが、当時の要件を満たしていないと判断される
2019年 Mk22 ASRとして、MRADが特殊作戦軍で採用される
2020年 USSOCOMが、MG338機関銃の購入を決定する
2022年6月 陸軍がMk22 ASR用のノルマ・マグナム弾にSIGを選ぶ

BARRETT MRAD

MARD ボルトアクション

Barrett MRADが対応する3種の弾薬

Barrett MRADは弾薬に合わせバレルとボルトが交換可能なモジュラーライフルであり、.308ウィンチェスター弾、.300ノルマ・マグナム弾、.338ノルマ・マグナム弾に対応している。既にPSR用弾薬としてMK248 300ウィンチェスターマグナム弾を供給している シグ・ザウエル はその製造・生産能力を評価され、アメリカ陸軍の新スナイパーライフルでも弾薬3種のうち2種を担うことになる。

バレルとボルトを交換すれば、1挺で3種の弾薬を使える。そのため、任務に応じて射程と威力を選べる。一方、SIGが担うのは、そのうち2種だ。

MK22 ASR スナイパーライフル

MG338とポリマー薬莢の軽量化

なお、USSOCOMは2020年に.338ノルマ・マグナム弾を使用するMG338機関銃及びマガジン、弾薬を シグ・ザウエル より購入する決定をしており、既にシグでの.338ノルマ・マグナム弾の対応は始まっている。弾頭を重くしている.338ノルマ・マグナム弾はマシンガンでの使用においてはその重量増が運用に響くため、 シグ・ザウエル では薬莢をポリマー化した軽量化についても考案しているようだ。

MG338は、.338ノルマ・マグナム弾を使う機関銃だ。ただし、弾頭が重いため、携行重量が課題になる。そこで、SIGは薬莢のポリマー化を検討している。

SIG M338

写真は、SIG製のMG338だ。ライフルと同じ弾薬を使うため、弾薬の共通化にもつながる。

 

シグ・ザウエル が生産契約したノルマ・マグナム弾とは?

ノルマ・マグナム弾とはスウェーデンの弾薬メーカーノルマ(NORMA)社が製造する弾薬ならびにその設計に準じた弾薬を差す。

項目 .300ノルマ・マグナム弾 .338ノルマ・マグナム弾
SIGの呼称 M1163 M1162
弾頭重量 215グレイン 300グレイン
特徴 .308口径にネックダウン 重い弾頭で遠距離に強い
使用する銃 Mk22 ASR(MRAD) Mk22 ASR、MG338

弾頭重量は、SIGの発表に基づく。なお、グレインは弾頭の重さの単位で、300グレインは約19.4gだ。

ワイルドキャットカートリッジから始まった

バレットMRADのメイン弾薬となる.338ノルマ・マグナム弾は、当初スポーツシューティング用のワイルドキャットカートリッジ(量産されない弾薬、量産されない銃向けのカスタム弾)として開発された。

ワイルドキャットカートリッジは、量産を前提としない特殊弾だ。そのため、本来は一部の愛好家向けの存在だった。しかし、設計が優れていたため、ノルマ社が製品化した。

.338ラプア・マグナム弾との関係

.338ノルマ・マグナム弾の開発当時、1km以内であればボディーアーマーを貫くことができる高い威力と精度を持った.338ラプア・マグナム弾が軍用長距離弾薬として実績を納めており、既にスポーツシューターやハンターからも人気が高かった。しかし、.338ラプア・マグナム弾に使用される.338口径250グレイン(約16.2g)の弾頭では物足りないと考えたアメリカ人スポーツシューターが、同じライフルで更に空気抵抗の影響を減らせる300グレイン(約19.4g)弾頭が使用できないかと考え、薬莢サイズを見直したカスタム弾を開発した。

ラプア・マグナム弾は、軍用長距離弾として実績があった。ただし、250グレインの弾頭では物足りない声があった。そこで、300グレインを使える薬莢が考えられた。

この設計をノルマ社が買い取り製品化し、2010年にはC.I.P.(Permanent International Commission for the Proof of Small Arms:銃器の安全基準を設定する国際機関)に認可されたのが.338ノルマ・マグナム弾である。

ノルママグナム

写真は、.300ノルマ・マグナム弾だ。.338と同じ系統で、口径だけが異なる。

※上記は.300NM弾

ケース容量を減らした設計の狙い

.338ラプア・マグナム弾よりも長い弾頭を弾薬の全長を変えずに設計し直しているため.338ノルマ・マグナム弾のケース容量は減少しているものの、ショルダー幅やテーパー角の工夫により.338ラプア・マグナム弾とほぼ同様の銃口エネルギーを持ちつつ、弾頭の重量増により遠距離での貫通力、命中精度がアップしている。

ケース容量が減るのは、弾頭を長くしたためだ。しかし、ショルダー幅とテーパー角を工夫し、銃口エネルギーは同等に保っている。その結果、遠距離での貫通力と命中精度が上がった。

ノルマではなくSIGが生産を任された理由

この性能に目を付けたアメリカ特殊作戦軍は.338ノルマ・マグナム弾を使用するスナイパーライフルやマシンガンを新たに採用し、各軍もそれに順応したかたちとなった。MG338用の弾薬だけでなくスナイパーライフル用の弾薬生産についても、開発元のノルマではなく シグ・ザウエル に任命したのである。これについては、アメリカ製品優先と考えたのか、資本の大きさ(生産能力・品質管理)による判断かは憶測の域を出ない。

開発元のノルマ社ではなく、SIGが選ばれた。理由は、アメリカ製品の優先か、生産力と品質管理かは分からない。ただし、MK248の実績もあるため、SIGの納入力は高く評価されたと考えられる。

シグ・ザウエル では.338ノルマ・マグナム弾をM1162カートリッジ、.308口径にネックダウンされた.300ノルマ・マグナム弾(既に.308ノルマ・マグナム弾という別の弾薬があるため.300としている)をM1163カートリッジとして、アメリカ軍に納入する。

呼称が整理されているため、納入品は区別しやすい。.338はM1162、.300はM1163だ。なお、.300としたのは、.308ノルマ・マグナム弾が別に存在するためだ。

MK22 ASR

アメリカ軍で存在感を増すSIG SAUER

シグ・ザウエルのアメリカ軍におけるここ数年の飛躍は目覚ましいものがある。M17/M18(P320)、MCX、陸軍NGSWにおけるXM5やXM250や277FURY HYBRID弾、MG338、そして今回のスナイパーライフル向けの.338及び.300ノルマ・マグナム弾と、アメリカ軍の銃器や弾薬において シグ・ザウエル の採用の勢いが止まらない。

SIGは、拳銃からライフル、弾薬まで幅広く採用されている。そのため、アメリカ軍のあらゆる分野に名前が並ぶ。今回のノルマ・マグナム弾も、その流れの1つだ。

軍用の銃器と弾薬はそれぞれのカテゴリーを得意分野とする銃器メーカーが担う傾向があったアメリカ軍だが、いまやジャンルを問わず シグ・ザウエル の存在感が強くなっていると言えるだろう。

老舗メーカーとSIGの違い

かつてコルトやレミントンといったアメリカを代表する老舗メーカーは古い体質を変えられず、いまや風前の灯火である。 シグ・ザウエル は元々ヨーロッパ資本のメーカーであったが、銃器部門についてはアメリカ現地法人を立ち上げ既にアメリカのメーカーとして認知されている。ヨーロッパの新しいものを生み出す力と、国防の面で強いアピールポイントとなるMADE IN AMERICAを両立した シグ・ザウエル は、総合的な銃器メーカーとしてアメリカ軍での存在感を更に強くしていくだろう。

SIGは、ヨーロッパ資本の出自を持つ。しかし、アメリカ現地法人を立ち上げ、アメリカのメーカーとして認知されている。そのため、MADE IN AMERICAを強みにできる。

 

ノルマ・マグナム弾に関するよくある質問(Q&A)

Q. ノルマ・マグナム弾とは何ですか?

スウェーデンのノルマ社が製造する弾薬と、その設計に準じた弾薬を指す。.338と.300の2種が、Mk22 ASRに採用された。

Q. Mk22 ASRとは、どんな銃ですか?

バレットのボルトアクション「MRAD」の、アメリカ軍での採用名だ。2019年に特殊作戦軍が採用した。

Q. SIGは、どの弾薬を納入しますか?

.338ノルマ・マグナム弾をM1162、.300ノルマ・マグナム弾をM1163として納入する。なお、MRADが対応する3種のうち2種を担う。

Q. なぜ開発元のノルマ社ではなく、SIGなのですか?

理由は公表されていない。ただし、生産能力と品質管理が評価された可能性がある。アメリカ製品の優先も考えられる。

Q. .338ノルマ・マグナム弾は、どんな弾ですか?

.338ラプア・マグナム弾と同等の銃口エネルギーを持つ。さらに、重い弾頭で遠距離の貫通力と命中精度を高めている。

Q. MG338とは何ですか?

.338ノルマ・マグナム弾を使う機関銃だ。USSOCOMは2020年に、購入を決定している。

Q. グレインとは何ですか?

弾頭の重さの単位だ。たとえば、300グレインは約19.4gになる。

Q. 契約の規模は、どれくらいですか?

SIGの発表では、契約額は最大1億5,700万ドルだ。また、初回の発注は450万発とされる。

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