NGSW プログラム遂に決着!SIG SAUERに軍配が上がる

NGSW プログラム遂に決着!SIG SAUERに軍配が上がる
NGSW プログラム遂に決着!SIG SAUERに軍配が上がる
 

NGSW : アメリカ陸軍 次世代分隊火器
選定プログラムが遂に決着!SIG SAUER XM5/XM250に決定!

2019年からアメリカ陸軍によって行われてきた NGSW (Next Generation Squad Weapon:次世代分隊火器)選定プログラムだが、遂に結論が出たようだ。選ばれたのはSIG SAUER(シグ・ザウエル)社のSIG MCX-SPEARライフル「XM5」と、SIG-LMG「XM250」SIG SLXサプレッサー、並びにSIG 6.8×51 FURYハイブリッド弾で、全面的にSIG SAUERが勝者となった。

NGSW SIG XM5

 

NGSW (Next Generation Squad Weapon:次世代分隊火器)とは?

このOUTLINEでも約2年半にわたって度々お伝えしてきた NGSW (次世代分隊火器)プログラムとは、アメリカ陸軍による新たなアサルトライフル及び分隊支援火器の開発・導入を目的とした選定テスト。今回、正式に契約の決まったSIG SAUERのほか、第2フェーズではGeneral Dynamics(弾薬については共同開発としてTrue Velocity)とTEXTRON SYSTEMSの計3社に絞って検討が続けられていた。

アメリカ軍ではアサルトライフルではM16/M4が、分隊支援火器ではM249 SAW軽機関銃が長年使われてきたが、5.56mmNATO弾では現代戦における性能不足が懸念されている。またM249においては7.62mm仕様(Mk48)とする際は弾薬の共有ができないほか、5.56mm弾も7.62mm弾も大量の弾薬を運ぶには重量面で兵士の負担が大きいなど、課題が浮き彫りになってきているのも事実であった。

アメリカ陸軍ではより有効な火器類の運用や兵士の負担軽減を実現するべく、
・5.56mmNATO弾よりも威力・射程距離・弾道において優位となりつつ、軽量な弾薬の開発。
・アサルトライフルと分隊支援火器で弾薬を共通とする。
・上記を満たす弾薬に適したライフル、軽機関銃、及びサプレッサー等の開発。
大雑把ではあるが大体この様な条件を出し、各社それに見合うかたちの開発を進めつつアメリカ軍での選定テストに新弾薬と新火器を提供していた。

 

次期アサルトライフルとして決まったX5:SIG MCX-SPEAR

アメリカ陸軍の新アサルトライフルとして決まったのはX5:SIG MCX-SPEARだ。SIG SAUERはもともとスイスのSIGとドイツのSauer&Sohnによるパートナーシップにより設立されたヨーロッパ資本の会社だが、 NGSW に参加したSIG SAUERはアメリカ資本で組織的にも分離されているSIG Sauer Inc.が開発を行った。

NGSW MCX SPEAR

MCX-SPEARという名を見て分かる通り既にアメリカ軍への納入実績もあるMCXがベースとなっており、モジュラーライフルである利点を活かした開発と言える。新弾薬である6.8mm弾に最適化されたバレルやボルト、マガジン及びロアが開発できれば、他のパーツはMCXの基本設計をそのまま流用できるからだ。

とはいえ、バレルの開発についてはかなり難儀したようだ。威力の高い新弾薬によるバレルへの攻撃性は5.56mmNATO弾に比べ高く、バレルの短寿命を克服するため冶金やコーティングの研究に苦労したようである。アメリカ陸軍の提示した要件を満たす設計にはなったものの、バレルについては熱心なガンマニアの間でも、M16に比べ耐久性が低いのではないか?交換時期がかなり早そうだ、という意見が飛び交っている。

NGSW XM5 MCX SPEAR

また、XM5 MCX-SPEARの開発に合わせMAGPULが新しいプロダクトを製作したのも面白い。本来バッファーチューブを必要としないMCXではあるが、XM5では兵士の使い慣れたストックとするためかリトラクタブル式ながらもミルスペック径のバッファーチューブが取り付けられている。

この折り畳み機構とMCXのロアレシーバー後端の長さもあり、XM5には通常よりも1ポジション分短いチューブが取り付けられているが、プロトタイプではMAGPUL MOE SL-Kストックがチューブ長に合わせて前方をカットした状態で取り付けられていた。

(実際のところ、X5がきっかけとなったのかはアナウンスされていないが)正式にXM5が NGSW として選定されるに合わせ、MAGPULではSL-Kをさらに短くしたSL-Mストックをリリース。SIG SAUERも NGSW の決定の発表時にはカットしたSL-KではなくSL-Mを装着した状態でビジュアルを公開した。

MAGPUL SL-M

SIG MCXは、使用弾薬や環境に合わせパーツを組み替えることで柔軟に仕様変更できるモジュラー性能が特徴であるが、バッファーチューブを必要としないこと以外、仕組みそのものはM16に準拠している。

MCXベースのX5が選定されたことについて筆者としては、無難なところに落ち着いたというか、M16の呪縛からは逃れられなかったかという印象を持ったが、それだけM16というライフルの完成度が高かったということだろう。

NGSW SIG SAUER XM5

 

分隊支援火器はM249に引き続き軽機関銃を選定

分隊支援火器として決まったのはXM250:SIG-LMGとなり、これまでのM249と同様、軽機関銃が選定された。海兵隊などではM249の後継として10年以上前からM27 IAR切り替えているなど、アメリカ軍での分隊支援火器を巡る動きとしては機動性を重要視する考えが強くなっていると思われていたが、陸軍ではそういった考えには至らなかったのだろうか?

NGSW XM250

XM250はM249と比較すると、弾薬の違いによる射程距離や威力の増加だけでなく重量が40%も軽減されるなど、かなり進化を遂げた軽機関銃となっている。これまでと同様 分隊支援火器として軽機関銃を採用しても機動性の向上は図れるということなのだろう。

NGSW SIG-LMG

また海兵隊と陸軍では作戦や部隊の展開方法の違いも大きく、やはり運用面においてベルト給弾が可能な分隊支援火器は陸軍にとって必要不可欠なのだろう。実際、 NGSW プログラムにて分隊支援火器としてマークスマンライフル型の提案をしたメーカーもあったが、残念ながらフェーズ2には残ることはなかった。(それが主たる理由ではないとは思うが。)

NGSW SIG-LMG XM250

長年あらゆる部隊で分隊支援火器として活躍してきたM249だが、XM250では名称にてM249に敬意を払いつつ、ベルト給弾の安定化や現代銃らしいアンビ仕様、標準仕様でリトラクタブル式となるストックや拡張バレルアセンブリーなど、軽量化以外のあらゆる面でも優れていると言えるだろう。

重量やジャムの多さ、砂詰まりや整備性の悪さなど、熟練した兵士でないと問題を抱えることも決して少なくはなかったM249だが、XM250の登場によって軽機関銃のイメージが一新される時が来るのだろうか?

NGSW XM250軽機関銃

 

NGSW の本質は新弾薬にあり:SIG 277 FURY HYBRID

NGSW で一番肝となるのが新弾薬である6.8×51mmハイブリッド弾の開発だ。 NGSW は銃器の更新に目が行きがちだが実際は6.8×51mm弾の採用がメインであり、その新弾薬を運用するために付随して銃器も開発する、というのが本質だろう。

一時期、True Velocityのポリマーケースを使用した6.8TVCM弾もかなり注目を集めたが、新弾薬においてはSIG SAUERの開発した277 FURY HYBRIDが選定され、銃器・弾薬を含めトータルでSIG SAUER 一社が担うかたちとなった。

威力・射程距離・弾道・重量など、多くの面で既存の軍用弾薬を上回るよう要求された新弾薬であるが、弾頭等の規格は当初より決定されており、 NGSW プログラムに参加したメーカーは弾薬の威力を上げつつもケース(薬莢)の軽量化と耐久性の両立をどのようにするか?という点に苦心していたようである。

NGSW 277FURY

SIG SAUERの開発した277 FURY HYBRIDは従来の弾薬同様 真鍮をケースのメイン素材として採用するが、アルミ製のロッキングワッシャーによりステンレス製ベースが結合された複合素材となっているのが特長。真鍮のみで製作されたケースに比べ素材面で高い圧力に耐えられるため、弾頭の威力向上に伴った重量増が少ない。

5.56m弾に比べれば重量増となってはしまうが、7.62mm弾よりも弾道・射程距離・威力とも向上しつつも重量が抑えられた優れた弾薬だ。ストッピングパワーの面でも5.56m弾の倍近い威力を備えていることを考えると、発射数を抑えることが可能=携行する弾薬を減らせる=総合的な装備の軽量化となるものと予測される。

 

SLX SUPPRESSOR

NGSW にはサプレッサーの要件も含まれる。アメリカ陸軍の出した要求には消音・消炎の程度もももちろん含まれるとは思うが、それ以上に射手に対し吹きかかる燃焼ガス量を抑制することに焦点が当てられているようだ。

弾薬発射時に発生する燃焼ガスには多くの有害物質が含まれており、それらが兵士に対し与える害は大きい。アメリカ陸軍が燃焼ガスの抑制まで考えが及んだのは歴上でも初めてのことらしい。

NGSW SLXサプレッサー

XM5とXM250に装着されるSIG SLX SUPPRESSORはガスの速やかな排出に優れ、射手に影響する燃焼ガスが抑制されているのが特長だ。SOCOMが採用しているアッパーグループの燃焼ガス濃度が70ppmであるのに対し、 NGSW で要求された数値は20ppm以下。SLX SUPPRESSORはXM5装着時に6.1ppm、XM250装着時で13.1ppmという測定値を出しており、従来の用途だけには留まらないサプレッサーの新たな可能性を広げている。

NGSW SLXガス排出

近年、ボディアーマーの性能が上がった事やアメリカ軍の敵となる組織へのアーマーの普及が進んだこともあり、5.56×45mmNATO弾は有効性が低くなった懸念からはじまった NGSW プログラム。SIG SAUERは今後10年間に渡り2040万ドルの追加生産契約を受領するに至った。

今後、6.8×51mm 277 FURY HYBRIDとXM5、XM250やそれに伴うサプレッサーや光学機器など、テスト運用が2024年から開始される予定だ。新弾薬やそれに伴う新火器類の性能が現場でも認められれば、長きに渡った5.56mmNATO弾は本格的に入れ替えが始まることとなる。

情報ソース
U.S. Army OFFISIAL
SIG SAUER BLOG
SOLDIER SYSTEMS

画像
SIG Next Generation Squad Weapons Media Portal
MAGPUL MOE SL-M Mil-Spec

 
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