米軍分隊支援火器の移り変わり、M27 IARについて

米軍分隊支援火器の移り変わり、M27 IARについて
米軍分隊支援火器の移り変わり、M27 IARについて
 

M27 IARについて

M27 IAR(Infantry Automatic Rifle)は、米国海兵隊がM249分隊支援火器(ミニミ)の後継機種として採用している分隊支援火器である。H&K社のHK416をベースとしたライフルがM27 IARとして採用され、HK416のバレルを16.5inに延長及びヘビーバレル化し、それに合わせてロングハンドガードを装備。11インチ化されたハンドガードにはバヨネットマウントも装備されている。M4クローンであるHK416から派生したM27 IARはM249よりも圧倒的に軽量で、オートマチックライフルマン(分隊支援火器の運用を行う兵士)の機動力向上が期待されるほか、射撃精度の点において優れている。
 
M27 IAR
 

M27 IARの誕生

2009年、アメリカ海兵隊は新たな分隊支援火器M27 IARとして採用した。他の兵士の持つ小銃と見た目がほとんど変わらないため前線において敵兵から見分けがつきづらく、ピンポイントで狙われにくい利点がある。弾数よりも精度の高い射撃で制圧を行い、高い火力によって敵の頭を押さえ他の兵士の前進を助けつつ、自らも同じスピードで移動するというのがM27 IARによる分隊支援の仕事である。

海兵隊が求めていたのは以下の条件を満たす分隊支援火器である。
・(軽量化によって)すべての人員の機動性を同一水準に揃えられること。
・弾薬と弾倉、訓練の共通化。
・対紛争作戦における民間人の「巻き添え被害」を防止しつつ火力を発揮できること。
・緊急の際は、従来の分隊支援火器と同等の火力を発揮できること。
 

 
アメリカでは第二次世界大戦中のBAR、バイポッド付きのM14小銃、M60汎用機関銃、そして1985年に採用されたM249軽機関銃がその役割を担ってきた。アフガニスタンにおける「テロとの戦い」では山岳地を移動した後、村落での市街地戦に突入するなど戦場がめまぐるしく変化した。また民間人と戦闘員が同じエリアに存在することが多い。こうした用途では重たい分隊支援火器で他の歩兵と突入するのは困難であるため、軽量な銃が求められていた。また中東の暑さと砂は銃の動作・部品の耐久性に問題が出た。ドイツ軍のG36小銃は過熱で弾着が変化し、M4小銃も故障が続出していた。
こうした状況を鑑み、海兵隊は第1海兵師団第7連隊第2大隊を次世代の分隊支援火器に関する研究にあて、結果を元に1999年、海兵隊は新型分隊支援火器を配備する要求を提出した。
 
M27 IAR
 
HK416の整備性、放熱性能は分隊支援火器にうってつけのものであった。IAR採用プログラムに向けてH&Kが提出した候補は、このHK416の銃身長を16.5インチのヘビーバレルに変更し、ハンドガードを11インチに延長、着剣ラグを取り付けたものだった。H&Kはプレスリリースで「M27 IARは納税者のお金をまったく使わず開発された」と喧伝していたが、事実、M27 IARの最初のバージョンの刻印は「HK416D」であり、既存のパーツを組み合わせて完成したものである。民間バージョンのMR556A1は、M27 IARとほぼ同じ構成となっている。
 
フル装備状態でM249軽機関銃の半分以下という軽快さによって、M27 IARの射手は部隊の移動スピードを下げることなく共に行動し、制圧射撃を行えるようになった。また敵の狙撃手から分隊支援火器を持っていることが分かりにくく、狙われにくいことが射手に安心感を与えている。M27 IARは元となったHK416と同様、高性能であることに疑いの余地はなく、海兵隊が全歩兵の標準装備として導入しようとしているのも頷ける。
 
M27 IAR
 
M27 IAR
 
M27 IAR