L85A2は、イギリス軍のSA80ファミリーに属する、L85の改良型だ。ブルパップ方式の小銃で、H&K社の改修で信頼性が上がった。この記事では、L85の特徴と改良の歴史を、2018年9月時点の情報で整理する。
L85について
L85とは、イギリスのアサルトライフルでイギリス軍のSA80ファミリーの一つである。
L85とL85A2の要点まとめ
- L85は、イギリス軍が1985年に採用した、ブルパップ方式の小銃
- 配備直後から欠陥が指摘されたが、H&K社の改修で大きく改善した
- 改修後のモデルは、イギリス軍にL85A2として制式採用された
- 作動不良は、平均25,200発に1回まで低下した
- 2016年9月には、H&Kが改良型L85A3のプロトタイプを公開した
1985年、XL70(XL64の改良型)をベースとして、それまで主流であったL1A1およびL2A3と置き換わる形で採用された。L85は発射機構やマガジンがグリップより後部に位置するブルパップ方式を採用していて、全体のコンパクト化を図っている。本体はプレス鉄板、ハンドガードやグリップ部分はプラスチックを使用していて、優れた生産性・耐久性を持ちながら低コスト化に成し遂げている。
また、SA80ファミリーには、軽支援火器のLSWもある。そのため、L85は、小銃型の位置づけだ。
L85は粗雑な銃なのか
日本では多数のメディアの影響で、後述の改修前の欠陥のイメージから粗雑な銃とみなされ、「非常に重い銃」「操作性の面などでも劣る極めて劣悪な銃」という情報が誤って広まっているが、実際にはブルパップ構造による重量増加や操作性の悪さは他の同形式のアサルトライフルでも見られるもので、本銃特有のものとは言い難い。
つまり、改修前の欠陥のイメージだけで、L85の性能を判断するのは避けたい。
L85A1とA2とは
| モデル | ポイント |
|---|---|
| L85 | 1985年に採用された、初期型 |
| L85A1 | 初期の欠陥を受けて、改良されたモデル |
| L85A2 | H&K社の改修を受けた、制式採用モデル |
| L85A3 | 2016年9月にプロトタイプが登場 |
L85は、イギリス軍の陸・海・空軍全てに採用されるという華々しいデビューを飾るが、1985年の配備開始直後から多数の欠陥が指摘された。
・コッキングハンドルが左側から付け替えられず、両利き用にはならない。
・SUSAT照準器を取り付け銃弾を装填したL85は、L1A1と比較しても80gほど軽いのみで、重量はほとんど変わらない。
・ブルパップ方式レイアウトに加え、SUSAT照準器の位置など重心が後方に寄りすぎて、フルオート射撃時の反動が非常に大きい。
・照準時のアイポイントが高く、遮蔽物からの射撃時にも大きく身体を晒す必要がある。
つまり、アイポイントの高さは、遮蔽物からの射撃で不利になる。そのため、現場では問題視された。
・引き金が固く、射撃精度に悪影響を与える。
・左側面に設けられたセレクタレバーおよびマガジンリリースの操作時、ピストルグリップから手を離す必要がある。
操作性と支援能力の問題
・スリングは射撃時に役に立たない。
・LSWのショルダーバットストラップは位置が高く、役に立たない。
・LSWは交換可能な銃身や弾帯給弾などのオプションが無く、支援能力が限られている。
| 項目 | 指摘された内容 |
|---|---|
| コッキングハンドル | 左側から付け替えられず、両利き用にならない |
| 重量 | L1A1より、約80g軽いだけ |
| 調達費用 | 1978年の想定は320ポンド。1983年4月時点で523ポンド |
上記以外にも、落下時の暴発の危険性や発射速度の低下なども指摘されていたほか、1978年時点で320ポンドと想定されていた調達費用は、1983年4月時点で523ポンドまで膨らんでいたが、当時の英国兵器委員会では問題なしと見なされていた。
これらの欠陥は、現場の声を受けて、改良の対象になった。そのため、後のH&K社の改修につながった。
L85A2に至る改修の内容
しかし、現場ではこれらの欠陥は捨て置けず、すぐさま改良してL85A1となるがトラブルは収まらず、ヘッケラー&コッホ(H&K)社が改修作業を施すこととなった。改良箇所は以下の通りとなっている
・ロッキングシステムのヘッドにエキストラクターネイルを追加。
・ファイアリングピンをややテーパーのついた形状に変更。
・コッキングハンドルの変更による薬莢の戻りを解消。
・ガスシステム周りをよりクリアランスの大きなものに。
・H&K HK416と同じような信頼性の高いスチール製マガジンの採用。
また、作動不良の解消とは関係ないものの運用面での改善も図られ、L123A2グレネードランチャーを装着できるようになった。装着の際、SA80のハンドガードは取り外されグレネードランチャーと一体のものに置き換えられる。
さらに、スチール製マガジンへの変更は、HK416と同様の信頼性を狙ったものだ。
その他にも様々な改良を加えた結果、作動不良の回数は平均25,200発に1回と、劇的に低下し、SA80A2が誕生。これをイギリス軍はL85A2として制式採用している。
この結果、L85A2は、初期型の欠陥イメージを大きく変えるほどの信頼性を得た。
2009年以降の小改良とL85A3
2009年頃からも小改良は行われており、以下の点において変更がみられる。
・ハンドガードをダニエルディフェンス社製RISへ変更。
・光学照準器をTrijicon ACOG、またはElcan SpecterOS4x へ変更。
・マグプル社製の軽量なEMAG弾倉の配備(2011年頃から)。
このように、L85A2は、ハンドガードや光学照準器など、現代的なパーツで更新され続けてきた。
・フラッシュサプレッサーをシュアファイア社製のものに交換。
SASとロイヤルマリーンでの扱い
イギリス陸軍特殊部隊「SAS」は早々にC7やC8(L119A1)、L100A1やHK53、G36C等と装備を交換し、ロイヤルマリーン(英国海兵隊)もL85は使い続けているもののL129やL100A1等の使用も行っている。その後も細かい改良が進められている。
ちなみにマガジンはNATO規格のSTANAG 4179で作られているのだが、MAGUPULはなぜかSA80用のEMAGを販売している。(もちろんSTANAG 4179互換の他の銃でも使用可能である)
さらに、2011年頃からは、軽量なMAGPUL社製のEMAG弾倉も、順次配備された。
SA80の今後とL85A3
なお、SA80シリーズは1994年に製造を終了しているが改良を続けることで2020年ごろまで使用される予定である。
2016年9月にはH&Kにより更なる改良を施したL85A3のプロトタイプが登場、アッパーレシーバーの再設計、ハンドガードにアクセサリースロットであるHKeyスロットを採用する等の改修が行なわれている。
そのため、L85A3は、L85A2からの、さらなる改良型といえる。なお、この記事は2018年9月時点の内容だ。
L85とL85A2に関するよくある質問(Q&A)
Q. L85とは何ですか?
イギリス軍が使う、ブルパップ方式のアサルトライフルだ。また、SA80ファミリーの一つである。
Q. L85A2とは何ですか?
H&K社の改修を受けた、L85の改良型だ。そのため、イギリス軍が制式採用した。
Q. L85はいつ採用されましたか?
1985年に、それまでのL1A1などと置き換わる形で採用された。ただし、配備直後から、多数の欠陥が指摘された。
Q. L85は粗悪な銃ですか?
そうとは言い切れない。ブルパップ構造による重量増加や操作性の悪さは、他の同形式の小銃でも見られる。そのため、本銃特有の欠点とは言い難い。
Q. L85A2で何が改善されましたか?
ロッキングシステムやファイアリングピン、ガスシステム、マガジンなどだ。その結果、作動不良の回数は、平均25,200発に1回まで減った。
Q. L85A3とは何ですか?
2016年9月に、H&Kが公開したプロトタイプだ。また、アッパーレシーバーを再設計し、ハンドガードにHKeyスロットを採用している。
Q. SAS(特殊部隊)はL85を使いますか?
SASは、早い時期に他の銃へ装備を交換した。一方、ロイヤルマリーンは、L129やL100A1も使いつつ、L85を使い続けている。
Q. L85のエアガンはありますか?
ある。そのため、記事内のリンクから、関連商品を探してみてほしい。











