PDWって何?Personal Defense Weapon

PDWって何?Personal Defense Weapon
PDWって何?Personal Defense Weapon
 

PDWについて

PDW(Personal Defense Weapon)とは、1990年代に登場した銃器形態の一つ。短機関銃と類似性が高く、このカテゴリが誕生して間もない事や開発に高い技術力が必要な為、種類もまだ少なく一般知名度は低い。しかし実績は高く、法執行機関や民間軍事企業を中心に採用されている。当初はH&K(ヘッケラー&コッホ)社の特定の銃器の固有名詞であったが、後にその銃にはH&K MP7という商標名が与えられたため、現在は種別呼称の一つとして認識されるようになった。日本では「個人防衛火器」「個人防御火器」などと訳され、主に自衛用や室内や車両における取り回しと威力を両立させることを目的に開発された火器となっている。
場合によっては個人に支給される自衛用の銃火器全般(拳銃や突撃銃、短機関銃等)、戦闘機などのパイロットや戦車兵等が機体から脱出した際に使用するAR7のような自衛火器等、様々なものを含む言葉となっている。

PDWの特徴

PDWは、限られたスペースに搭載する場合が多いため、コンパクトで火力の高い短機関銃を採用する場合が多い。また、MP5K PDWや9mm機関けん銃のように、特にコンパクトな短機関銃を設計する場合もある。
歩兵以外の兵が用いることを想定しているため、扱いやすさも重要視される。ただし、短機関銃では貫通力が低く戦場で役に立ちづらいことから、貫通力の高い専用弾を用いる銃が設計されることが多く、能力的には短機関銃とアサルトライフルの中間に位置する銃器と言う事ができる。FN P90やH&K MP7がその代表格であると言える。
冷戦終結や対テロ戦闘の台頭によりPDWの価値が低くなったため、近年ではこれらも短機関銃の一種として捉えられることもある。

アサルトライフルのような小銃は後方任務用として重く、取り回しも悪い。逆に短機関銃や拳銃では威力や射程に欠ける。特にボディアーマーや車両への貫通力不足は問題である。分析した結果、以下のような仕様の銃器が効果的であると西側先進国は結論を出した。
・後方施設内全域で戦闘行為を行える有効射程にして200-300メートル程度の能力がある。
・短機関銃のようなあらゆる兵科の兵士が扱える利便性を持つ。
・片手撃ちが可能なサイズもしくは形状である。
・発射反動が片手使用で扱える。
・上記射程範囲で対物貫通力が小銃並に高い。
・装弾数が可能な限り多い。
すなわち、小銃より携帯性に優れ、短機関銃のように片手でのとっさの取り扱いが可能で、短距離でなくともボディアーマーに対して効力を持つ銃器の開発を行うこととして各メーカーに求めた。そして開発されたPDWは、逆に言えば上記で定義された状況での攻撃的な戦闘でも威力を発揮するということでもあり、特殊作戦を行うような強襲部隊や、警察の機動部隊などでの使用も非常に効果があることがわかり、その分類呼称に反し、このような特殊な兵科での攻撃目的での使用の方が盛んなようである。

PDWとして開発された銃

■FN P90
PDWの持つ特徴を備えたコンセプトで開発された世界初の銃。採用国も多くPDWの代名詞となっている。かつては後方部隊の個人防衛火器として開発されていたが、冷戦終了とともに対テロ用として運用されるようになった。
FN P90
 
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■MP5K PDW
P90に対抗する形でH&K社が開発したPDW。APDWとしての設計はされておらず、戦車兵や航空機のパイロットなどが脱出時に使う自衛用SMGであり、拳銃弾を使用するMP5Kに折りたたみ式のストックを付けただけ、と従来のものとあまり変わらないPDWである。
MP5K PDW
 
■MP7A1
PDWというカテゴリの元で作られた最初の銃。UZIやMAC10と同じくマガジンをグリップ内に収納。開発名はPDWだが、後にMP7に変更。
MP7A1
 
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■KAC PDW
新型弾薬を使用するナイツアーマメント社が実験的に開発したPDW。M4カービンを一回り小さくしたような見た目。既存の銃と操作の共通化やアサルトライフルを小型化するという発想で作られていると言える。
 
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■KAC SR635
ナイツアーマメントが開発したPDW。前身となるKAC PDWと違い、M4カービン等AR-15のアッパーレシーバーを組み替えるコンバージョンキットとなっている。
KAC SR635
 
■MAGPUL PDR
マグプル社が開発しているプルバップPDW。新型弾薬を使用せず、従来の5.56x45mm NATO弾を使用する。AR-15等の西側諸国のアサルトライフルに使われているSTANAG マガジンを使用する。様々な銃の良い所取りのようなPDWとなっている。
MAGPUL PDR
 
■SCAR PDW
FNHが開発したPDW。SCAR-Lを短銃身化したショートカービンである。
SCAR PDW
 
■PP-2000
ロシアのKBP社が開発したPDW。新規に開発された9mmAP弾7N31を使用する事でボディーアーマーに対抗することが可能となっている。7N31弾はメーカーの発表によると距離30mで8mm厚のスチールプレートを貫通できるとの事。MP7と同じく樹脂を多用した外見となっており、グリップ内にマガジンを収納するスタイルとなっている。
 
■CBJ-MS
スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクス社とCBJ Tech社が開発したPDW。
新規開発された6.5x25CBJ弾を使用するが、9mmx19弾の使用も可能。 MP7と同じくグリップ内にマガジンを収めるスタイルだが、外装にポリマーなどが使用されていない旧世代のSMG的なスタイルとなっている。
 
■AAC Honey Badger PDW
アメリカのAdvanced Armament Corporationで開発が進められているPDW。
AR-15をベースとしており、取り外し可能なサウンドサプレッサーを標準で搭載しており、APDWというよりMP5SDのような特殊作戦向けの銃火器となっている。
300 AAC Blackout(7.62mmx35)弾を使用し、サブソニック弾を使用した際には非常に静かな音で発砲が出来る。
Honey Badger PDW
 
■MCX
シグザウエル社で開発されたハニーバジャーと同コンセプトのPDW。
AR-15ベースで、使用弾薬は5.56mmNATO弾、7.62x39mm Russian、.300 AAC Blackoutのマルチキャリバー。
 
■Troy M7A1 PDW
Troy Defense社が販売しているAR-15を銃身を7.5インチに短くし、NEA社のストックを使用してレシーバーエクステンション(バッファーチューブ)の短縮化を行ったもの。
 
■B&T MP9-T PDW
Brügger&Thomet AG社が販売しているPDW。 使用弾薬は9mmx19弾で、旧来のPDWと同じ自衛用火器と言った扱い。
 
 
2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、武装警察や特殊部隊向けのインドア戦闘で効果のある銃器の必要性が高まり、採用する各国軍や法執行機関などの公的機関も増えつつある。そして当初の上記に明示された仕様とは異なる「近接戦闘で弾数が多く、取り回しのしやすい高威力の銃器」という括りで、既存のストッピングパワーの強い弾丸の規格を利用した物や、既存の弾薬を使用する既存の銃器(実質的にはアサルトカービンが多い)の改造・改良型にPDWの名称のみを冠して販売、採用するケースが増えてきている。