FBI 人質救出チーム(HRT)について
FBIでは1984年のロサンゼルスオリンピック開催に際する警備(対テロ作戦部隊)が問題となっていた。1972年に起きたミュンヘンオリンピック事件のような大惨事を、再び起こさない為に回避しなければならなかった。そこで作戦は軍の特殊部隊の任務であるとの意見が多く、支配的であった。
FBIでは、1973年よりSWAT部隊 (FBI Special Weapons and Tactics Teams) の編成に着手していたが、任務は凶悪犯の検挙などに留められており、対テロ作戦に必要な訓練を受けていない事が明らかになった。
1978年にアメリカ国内でのテロ事件を想定して行われたジョシュア・ジャンクション演習で、実際にはデルタフォースが突入作戦を行った。また、演習の際にデルタフォースが装備品に手錠なく、逮捕は任務ではない為、手錠は必要ないという考えであったという。
アメリカ合衆国では、民警団法(PCA)などの法的規制のために、平時における連邦軍の国内活動には制約が大きかった為、軍の特殊部隊の装備・訓練は軍事行動に重点を置いており、特に国内での治安出動には不適な部分が多かった。
このような事から文民警察の対テロ作戦部隊の必要性を考え、デモンストレーションが行われた。
先にデルタフォースとSEALsチーム6の対テロ演習。その後にFBIのSOARS(訓練部の特殊作戦・研究課Special Operations and Research Staff)の演習を行った。軍の特殊部隊は持てる限りの武力を行使しており、裁判所に持ち込むには不都合な部分が多かったのに対し、SOARSのFBI捜査官は、射撃は最低限に留めて武装したテロリストのみを排除しており、不必要な流血は回避されていた。その違いは一見して明らかであり、文民警察官による対テロ作戦部隊というコンセプトは受け入れられるようになった。
そしてFBIの対テロ作戦部隊として、1983年に創設されたのがHRTである。
HRT隊員
HRTへの応募には、3年以上の現場勤務経験と優秀な業績評価が必要となる。
2週間の選抜課程は極めて過酷である。
新隊員訓練所(New Operator Training School, NOTS)では、2週間にわたる拳銃射撃術を皮切りに、5ヶ月に渡る訓練を受ける 。これに加えて、狙撃手は、アメリカ海兵隊の前哨狙撃兵訓練所で2ヶ月に渡る訓練を受ける。
専従の医療要員および救急車のほか、全隊員が80時間以上の本格的な医療訓練。
HRTでは、「人命を守るために」というモットーを導入しており、これに際し本格的な医療訓練が実施されている。
訓練課程の策定にあたってはデルタフォースやSEALsチーム6が全面的に協力している。、特にデルタフォースは自らの訓練施設を4週間に渡ってFBI捜査官に開放。
またSOARSは他国の同種部隊との伝手を利用して、西ドイツのGSG-9やフランスの国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)、イギリス陸軍の特殊空挺部隊(SAS)とも積極的に共同訓練を行った。
装備
HRTは原則的に独立行動能力を備えるように求められている。
(出動時)
食料・医薬品・武器・弾薬・車両・発電機や通信機器・資材・機材。
出動時装備はC-141輸送機1機に収まるように、個人装備はタクティカル・バッグ1個。
MD 530「リトル・バード」などのヘリコプター。
LAV-25歩兵戦闘車。
必要に応じてCIRGが運用する固定翼機の支援も受けることができる。